【G殲滅大作戦】
それは真っ赤な月が真上に昇る、深い深い夜のことでした。悪魔たちはぐっすり眠り、魔界を冷たい風が闊歩する静謐なる夜。絹を裂くような女の悲鳴が、ある城に響き渡ったのです。
「ぎゃぁあああああ!!」
それがすべての始まりでした。
~プロローグ~
「どうした!?」
カインはキッチンに駆け込み、座り込んだルシフェルを見つけた。薄いネグリジェの上にカーディガンを羽織っていたが、彼女は大きく震えている。それが、寒さのせいではないのは明らかだった。
「大丈夫か?」
カインはルシフェルの肩を抱き、顔を覗き込んだ。桃色と水色の瞳には、今にもこぼれそうなほど涙が溜まっている。
「そ、そそそこ、に…」
喉を引きつらせながら、ルシフェルは指を指した。指の先をたどって行くと、そこは冷蔵庫。何の変哲もない、ただの冷蔵庫だ。
「冷蔵庫がどうした」
「しし、したから、アレが!」
ルシフェルは何を思い出したのか、さーっと青くなっていく。一体何が起きたのか、状況把握がまったくできないカインは頭にクエスチョンマークを浮かべながら、ルシフェルを落ち着けようと背中をさすった。
冷蔵庫。そこに、女帝をここまで怯えさせる何がいると言うのだろう。
「何です、今の悲鳴!?」
「何事ですか!?」
カインがルシフェルを宥めていると、物凄い勢いでバズーとデイズが駆け込んできた。ぴょこんと寝癖が目立つが、本人たちは気付いていないようである。
「カインさん! 一体何が!?」
デイズはルシフェルの隣に屈み、カインに尋ねた。ざっと辺りを確認してから、バズーは三人を見る。
「異常はないようだけど」
「こんなにルーシーが怯えてるのよ。何かあったんだわ」
そうして双子の視線はカインに向いた。
「俺が来た時にはもう、こいつはこんな感じで――」
未だに震えるルシフェルを見ながらカインは話し出したが、かさかさ、と物音がそれを遮った。ルシフェルはびくっとする。デイズも固まる。バズーも顔を引きつらせた。
「おい、どうしたんだよ」
カインの問いに、三人は押し黙ったままだった。身動きすらしない。異常な緊張状態だ。
「何が…」
ぶん、と音がした。そして、カインの頬に何かが止まった。全員一緒にそれを確認し
て、一拍の間を置いてから。
「ぅおおおおおお!?」
「ぎゃぁああああ!!」
「いやあああああ!!」
「わああああああ!!」
悲鳴は重なった。
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