【大会に出よう!】
歓声が上がる広場。
カラフルで立派なステージ。
『第57回料理大会、開催です!』
司会の声に、割れんばかりの拍手が応えた。
~3.本番~
「なんか、俺、場違い……」
「大丈夫! バズーの料理、俺結構好きだぜ!」
ステージの横で、レヴァイアはバズーの背中をバンバン叩いた。近くには他の出場者四人。みんな熟練者のようで、貫禄が漂ってくる。
「うぅ~緊張半端ないんですけど」
「気合いだ! みんな見てんだから頑張れ!」
カインとデイズは一般客と一緒に観覧席だ。バアルとルシフェルは審査員として席についている。レヴァイアも本来なら審査員なのだが、騒げる位置がいいと言うので、観覧席に戻る予定である。
バズーの側にいるのは、料理人として最後のアドバイスをしようとしたからだ。
「いいか、バズー。司会者の話よく聞いてろよ。これは、ルールも何もかも当日教えられるぶっつけ本番の大会だ。他の奴らもドキドキしてる。だから、始めから気後れするなよ!」
「…そう、ですよね。コネで出場したってのでちょっと腰引けてたけど、俺だって負けられない。ガンガン行きます! 頑張ります!」
元気よくバズーは返事をした。とたんに、司会者の声が届く。
『では、出場者の入場です!』
バズーは背中を押された。頑張れ、という声に頷く。
そして、力強く歩き出した。
∞∞∞
『以上五名が、優勝目指して戦います。内四人はコック歴十年以上という猛者。そんな中、バアル様の推薦で出場したバズーさんは、どう戦うのか。皆さん、瞬きは厳禁ですよ』
司会者は立ち位置を変える。すると、ガラガラと台を押して女性が現れた。真っ赤な布が掛けられていて、台の上に何が乗っているのか皆目見当がつかない。
『でば、お題の発表です!』
司会者は台に近寄り、バッと布を取った。そこには、茶色いイモが山積みになっていて、みんなに馴染みのある野菜だとすぐにわかる。司会者は叫んだ。
『ジャガイモ! そう、ジャガイモです! 右手に見える広大な畑。そこで出場者自らじゃがいもを掘り、料理を作ってもらいます! ジャガイモ以外の材料は、こちらでちゃんと用意されてますので、ご心配なく。ああ、そうそう、この山積みになってるジャガイモはレプリカですからね。使おうとしても無駄ですよ』
そう言って、司会者は出場者に向き直った。
『用意はいいですか? 始めますよ?』
出場者が頷くのを確認すると、司会者は大きく深呼吸をした。数回繰り返した後、大きく息を吸って。
『では、いきましょう。スタァートォ!!』
どーん!と、どこからか銅鑼の音が響く。一斉に、出場者は駆け出した。
∞∞∞
軍手、スコッブ、その他もろもろ。ジャガイモ発掘の為、出場者はそれらを身につけていた。
「って、え? なんでそんな準備いいの!?」
何も装備していないバズーは、一人うろたえていた。それを見て、デイズが叫ぶ。
「早く掘れバカァー!」
その隣で、レヴァイアが呟いた。
「あ、やべっ、どんなお題が出ても平気なように、出場者は事前準備徹底してんだっけ」
「ちょっと待て、なんだその今更な情報!」
ビシッと、カインの鋭い突っ込みが入る。レヴァイアは頭を掻いた。
「いや俺、出たことないからよく知らなかったっつーか、あーうん、何て言うか、準備のこと忘れてた」
「料理なら俺だとか言ってたから、バズー指導全部まかせてただろ!」
「や、あれも料理教えてただけで………バズー! ごめーん! とにかく掘れー!」
スパンっとカインはレヴァイアの頭を叩いた。そして、客を仕切っているポールを跨ぐ。
「え、カインさん、どうしたんですか?」
応援に夢中になっていたデイズは、目を見開いて質問した。カインは腕を組んで答える。
「手伝う! 明らかに不利なバズーをあのまま放っておけねぇ」
「そうだな! よし、俺も行こう!」
レヴァイアもカインに続く。ずんずん進んで行く背中を見送ってから、デイズは我に返った。
「えっ? えぇ!? アリなのそれ!?」
その叫びは歓声に掻き消された。
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