【宝を探せ!~天界の秘宝~】


1.埋もれていた暗号

 今日も平和な天界で、ヨーフィは久々に家の掃除をしていた。一人暮らしだし、しょっちゅう外出しているから汚れることはそうないのだが、やっぱり放っておけば埃は積もるし全体的にくすんでくる。たまーにラファエルが出動日だというのに寝こけているヨーフィを起こしにやって来たり、アザゼルが暇だからと いう理由でふらーっと現れたりするから、定期的の掃除は欠かせないのだ。
「うわー、結構ゴミあるなぁ。袋足りるかー?」
 ヨーフィは、用意した掃除用具の中から束になったゴミ袋を取り出した。一枚抜き取ってバサバサと広げる。すると、袋の端が何かに当たった。ひらひらひら、とその何かは床に落ちる。
「ん? なんだろ……」
 紙を拾い上げると、薄汚れた紙でだった。ひどく黄ばんでいて、書かれた文字も消えかかって読みにくい。だいぶ古い物であるらしいが、ヨーフィに見覚えはなかった。首を傾げながらも、目を凝らして読んでみる。
「えーと、なになに」

『この紙を手に入れし者よ、ここに宝の在りかを示す。赤い泉、緑色の騎士』

 紙に書かれているのはそれだけだった。古い紙に二行の文。普通なら「なんだこれ」の一言でゴミ箱行きであろうが、その紙を手にしているのはヨーフィである。他ならぬ、ヨーフィなのである。
 宝。その一文字に彼の目は釘付けだった。
「ヨーフィくん。ラファさんから桃もらったんだ。一緒に食べない?」
 桃の入った籠を持ったアザゼルがノックもせずに玄関に現れても、ヨーフィは動かなかった。宝、宝、宝。それしか見えていないのか、アザゼルの呼びかけに答えようともしない。
「あ、掃除中だった?」
 アザゼルはトコトコと、散らかった室内を突き進んだ。ヨーフィの後ろまでやってきて、やっと彼の異変に気がつく。
「ヨーフィくん? どうかし――」
「これだぁーーーーーー!!!」
 いきなりの大声に、アザゼルは驚いて籠を落とした。鈍い音を立てて桃が散らばる。慌ててかがみ込んだ彼の気配にふり返って、ヨーフィはやっとアザゼルの存在を知った。
「あれ、アザゼル!?」
「折角の桃が……」
「え、あ、ごめん」
 状況を察したのか、ヨーフィも屈み込んで桃を拾い始めた。しかし、二三個手に持ったところで、すっくと立ち上がる。
「って、違う違う! アザゼル、大変なんだ!」
「そうだよ、大変だよ。ああ、痛んだところ切っちゃえばなんとか食べられるかなぁ」
「違うって! 桃なんかより重大ニュース!」
 アザゼルはヨーフィを見上げた。キラキラと輝く表情がそこにはあって
「宝探しに行こう!」

 数秒固まった後、アザゼルは桃拾いを再開した。



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