【宝を探せ!~天界の秘宝~】


2.始まった宝探し

 話し合いができるようテーブル付近だけは片付けて、ついでに桃も切って皿に盛り、二人は向かい合った。桃を食べながら、ヨーフィはアザゼルに暗号の書かれた紙を差し出す。受け取ったアザゼルは、それを読んで「あー」と驚いているのか呆れているのかわからない声を上げた。
「確かに宝って書いてあるね」
「だろ!? これを解いて、宝を見つけて、そんでもってラファ兄に見せれば……」

『おお、ヨーフィ! なんて素晴らしい宝物なんだ! お前がこれを見つけたなんて、感動した!』
『そんな、俺はただ暗号を解いただけだよ』
『いや、だがこんな宝を……見直した。ヨーフィ、これからは私の右腕として一生付いてきてくれないか?』
『ら、ラファ兄、それ本当に?』
『ああ、お前以外にあり得ない』
『俺、俺精一杯頑張るよ! ラファ兄ーーー!!』
『ヨーフィ!』

 にやにやと笑うヨーフィを目の前に、アザゼルは手にした紙にもう一度目を落とした。希望に胸を膨らませているヨーフィには悪いが、どう見ても最近の物だ。その証拠に、マヨネーズらしき染みが隅についている。文体こそ古いが、誰かが悪戯か何かで作ったのだろう。
「ヨーフィくん、でもこれ……」
「さっそく暗号解読を始めよう、そうしよう! アザゼル、貸して」
 幸せな想像から帰ったヨーフィは、アザゼルから紙を奪った。そして暗号を読む。
「赤い泉を守る緑の騎士……? 赤い泉、赤い泉、んー」
「……まあ、うん。付き合うけどね、気になるし」
「アザゼルー、ぶつくさ呟いてないでお前も考えろよー」
「わかってるって」
 赤い泉、と呟きながら考え込むこと十数分。皿に乗っていた桃はなくなり、ヨーフィはじっとしていられなくなったのか、立ち上がった。
「とりあえず、泉って書いてあるんだから行ってみりゃいいんだよ」
「でも、泉って結構そこここにあるよね。どれに行くの?」
「え、あー、んーと」
「赤いって何が赤いんだろうね。僕、見たことないなぁ」
 アザゼルも立ち上がる。紙はヨーフィがポケットにしまった。どちらからともなく歩き出し、家の外へ出るとすでに太陽は傾き始めていた。そろそろ肌寒い季節である。日が沈むのも早い。
「赤いって、まさか!?」
 何かを閃いたのか、ヨーフィは不意に走り出した。いきなりのことに、アザゼルも慌ててついていく。
「どうしたのー?」
「暗号解けたかもしれない!」
 逃げ足が速いと有名なヨーフィにアザゼルがついていくのは大変だった。小さい体は小回りが利き、右へ左へひょいっとすぐに曲がってしまう。しかも、小さいから見失いやすい。
「ちょ、ちょっと待ってよー」
「あっ!」
 ヨーフィは突然足を止めた。追いついたアザゼルが肩で息をしながら周りを見回すと、そこは天界で一番大きな泉だった。憩いの場として多くの天使が使っている。しかし、今は誰の姿もなかった。
「ここが、暗号の泉?」
 アザゼルが尋ねる。ヨーフィは力強く頷いた。
「夕方になるとさ、太陽の光反射して、真っ赤に見えるんだ。たぶん、赤い泉ってそのことだと思う」
「じゃ、近くに緑の騎士がいるはずだね。騎士っぽいのなんて、あったっけ?」
「それなんだよなぁ」
 二人は手分けして、緑の騎士を探しにかかった。緑というのだから草木系だろうと見当をつけ、騎士っぽい物を探す。しかし、鎧や兜などがそこらに放置されている訳もなく、捜索は難航した。
「うー、駄目だ、わっかんねー!」
 ヨーフィが頭を抱えたその時、アザゼルの声が聞こえた
「ヨーフィくん! これっぽいよ、緑の騎士!」 



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