【白雪姫ルシフェル】


10.めでたし

「二人の愛、見せてもらいましたよ」
 現れたのは新しいドレスを着た女王バアルでした。その横で盛大な拍手を送っているのは召使いミカエルです。バアルは笑顔で言いました。
「愛、二人の真実の愛を見て心が洗われました。白雪姫、すみませんでした。これからは仲良くしていきましょう」
 ルシフェルにバアルは手を差し出します。
「もちろんですわ、お義母様!」
 二人は握手をしました。同時にその場の全員が拍手します。白雪姫と女王は和解できたのです。なんと素晴らしいことでしょうか。
 各々は拍手しながら感想を口にしました。
「猟師役始めた時はどうなるかと思ったけど、なんとかなったなぁ」
「ちゃんとまとまったもんな。バアルの奴、うまいこと鉄の靴回避したし」
「いいじゃないのん。劇だしハッピーエンドで」
「あ、デイズ、残ったカレーどうしよ」
「持って帰るしかないわ。その前に片付けなきゃ」
 そんな中、バアルがレヴァイアを向きました。
「あ、レヴァくん。天界へのお礼の品、何かありますか?」
「へ? 天界? ラファにじゃなくて?」
 レヴァイアは首を傾げました。役がなかったのに代わりにお婆さん役をやってくれたのはラファさんです。
「ここ来る時にラファに会ったんですよ」
 バアルは廊下の出来事を思い出しました。
「ぐったりしてて、まあ手伝ってくれたし『散々女王を性悪だお似合いだと笑った件』は水に流してやりました。ラファとはそれで終わりです。しかし、いろいろ輸出してもらいましたからね、天界にはお礼しとこうかと」
 天界にお礼をするということは、間接的にラファさんにお礼をするいうことです。それに気づいたレヴァイアは笑いました。
「素直じゃなーい」
「べ、別に、すごく疲れてたようだから心配になったとかじゃないんだらねっ」
「はいはい、わかってまーす」
 二人と少し離れた場所で、双子の片付け指南を三人は受けていました。ルシフェルはニコニコとカインの腕を掴んでいます。カインはげんなりしていましたが、振りほどこうとはしませんでした。
「それから小人の家が……あ、その前に森の動物ね」
「それはミカエルだろ。俺たち、料理片付けるからその間によろしく」
「はーい、ちゃんとみんなを家に帰しまーす」
 ミカエルは手を上げて返事をしました。デイズはうなずくとルーシーを見ます。
「ちょっとルーシー、さっきから機嫌良いのはわかるけど聞いてる?」
「うん♪」
「あ、これ聞いてないわね」
 バズーはカインを心配そうに見ます。
「カインさーん、大丈夫ですか?」
「家に帰ってからを考えると頭が痛い……俺はまだ身を固めねぇぞ…!」
 その時、レヴァイアの声が届きました。
「みんなー、片付け終わったら六本足豚のトンカツパーティーやるぞー!」
「! うそマジ!? デイズ聞いた!?」
「やだっ! 早く片付け終わらせなきゃ!」
 それはなんだ、と首を傾げるカインとミカエルを双子はぐいぐい押しました。説明は後だ、早く片付けを!
「よくわからねーが、やるか。ルーシーそろそろ離せ」
 カインはルシフェルの手をほどこうとしました。しかし、ルシフェルはにこにこカインに言います。
「カイン、ありがとね!」
 その輝く笑顔と素直な感謝の言葉に、カインは固まりました。
「……あ、ああ、どういたしまして。………片付け、行くか」
「うんっ」
 カインはルシフェルの手をほどかないまま歩き出しました。ルシフェルはとても嬉しそうでした。

めでたしめでたし。



おまけ

「我が主よ、さあ悪魔との契約書を出してください」
「なっ、何のことだ? ラファエル、我にはさっぱり…」
「ネタは上がってるんです。観念してください」
「やめろ! ハサミを持って近づくのはやめろ! 我だって主役に――」
「天界で劇はやりません!」
 二人の様子を影で見ていたのはヨーフィとアザゼルでした。
「おおお、ラファ兄強ぇ…」
「魔界から届いた料理の数々、報告に行けないね。食べちゃう?」
「勝手には駄目だろ。あ、神様負けた」
 天界はラファさんのお陰で平和です。


FIN.



セツリ様、みんなが生き生きとしている素敵なお話をありがとうございました。


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