【G殲滅大作戦】
バズーは真剣な面持ちで、二人を見やった。そして、重々しく口を開く。
「デイズは俺に、気温の下げる方法を教えてくれました」
カインとルシフェルは息を呑む。
「そして」
バズーの瞳は澄み切っていた。二人は見つめる。
「関わりたくないから私は寝る、と」
~3.作戦実行、そして~
「起きろー! 今までのは寝た振りかぁ!」
「一人だけ逃げようったって許すかー! 女帝命令だ起きろー!」
「バズー! あんた何バラしてんのよ!」
「いや、あの場はお前の言葉を全部伝える場面だろ?」
「バカ! ああもう、トラウマなのは本当だもん! そっとしておいてー!」
わいわいがやがや、というよりもギャンギャンガーガー四人は言い争った。真夜中に起きたトラブルによって、全員気分が高まっていたのかもしれない。ルシフェルはいつもより強気に出て、カインは年下相手にムキになり、デイズは誰も彼もに食って掛かる。唯一まともかと思われたバズーも右往左往だ。デイズに怒鳴られ小突かれ、逃げ惑う。
「一時休戦!!」
肩で息をして、カインは両手を上げた。意味が無い。そう、やっと気付いたのだ。
「俺たちが立ち向かう奴らはキッチンにいる。ここじゃない!」
それもそうだ、と三人は座りなおした。カインも座って、再び輪が出来る。切り替えの早さ。それはこの城に住む者の誇れる特技である。
「で、策があるって?」
カインはデイズに尋ねた。
「あ、はい。気温下げるだけなら、窓全部開ければ結構な寒さになると思います」
「おお、盲点だった!」
ルシフェルは両手を打った。カインも頷く。
「よし、全員窓を開けに行くぞ」
カインの号令でみんなは立ち上がる。その姿は少しボロボロであったが、誰も指摘はしなかった。
そして、キッチン前に集まった四人。入口から中を覗き込めばそこここに見える黒い物体に、全員震えてしまう。
「きも…」
「動いてるよぅ。燃やすの嫌だよぅ」
かさかさかさと移動するGを見て、カインは口を押さえた。しかし、動きが鈍っているようにも感じられる。
「と、飛んだりしないわよね。ね、バズー」
「結構寒いし、大丈夫さ。きっと」
そういうバズーの目に、落ちているボールが映った。どこからか転がってきたのだろう。風通しをよくする為、部屋のドアもすべて開いている。
バズーは思った。これを投げて奴らの動きを確かめて見てはどうだろう。
「……うん、確認」
小さく呟く声は、誰にも届かなかった。Gに釘付けになっている三人の後ろに行き、ボールを拾う。そして、投げた。
――ガシャン!
「何っ!?」
驚く三人に、バズーはキッチンを指差した。
「ボールを投げても、奴らはあまり動いてない! ルーシー今だ!」
「おおう、そうか!」
ルシフェルは集中した。頑張れ、という声援に背中を押されるように、全神経を集中させる。大丈夫だ、できる。私にはすべてを終わらせる責任がある!
「ルシフェル、行きます!」
みんなは気付かなかった。ボールが当たったガスの元栓から、しゅーっと何かが漏れる音がするのを。
――ドッカーン!!!
夜が明け始めた空に、大きな花火が上がった。
それに気が付いた者は、誰もいなかった。
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