【宝を探せ!~天界の秘宝~】


4.苦難の先に

 羊の牧場に併設されていたハト小屋、広場を彩る花壇、古びた井戸、訓練場の側にある武器庫の植え込み。暗号を解いては次の暗号、それを解いてはさらに次の暗号と、二人は天界を歩き回った。その先に宝があるのだと信じて。
 だが、辺りが真っ暗になり完全に夜の時間帯になった時、ヨーフィの我慢は限界に達した。
「だーっ! いつになったら宝なんだよ!」
「まあまあ」
 つい先ほど見つけた暗号は『赤い屋根、白い壁、周り彩るハーブ』だ。天界にある家は大抵白い。そして赤い屋根もざらにある。だが、ハーブが周りを囲っている家は一軒しかなかった。だから、二人はそこを目指してとぼとぼ歩いているのだが、先の見えない宝探しに、言いだしっぺのヨーフィは疲労の色を濃くして いた。
 アザゼルはというと、ヨーフィの後をついて歩くだけだったので、そこまで疲れていはいない。ヨーフィの頭が冴えているのか、アザゼルの頭が暗号を解くのに向いていないのかわからないが、今まであった暗号すべてをヨーフィが解いていたのだ。アザゼルと違って、頭を使い体を使った彼はずいぶんくたびれているようだ。
「あ、ほら、見えてきたよ。でも、窓暗いね。まだ帰ってきてないのかな? これじゃハーブ調べていいか聞けないね」
「もーいーよ。いないなら仕方ない。早く探そうぜ」
「いいのかな」
「ちょこっと探すだけだしさ。はい、始めた始めた」
 明りがなくても、青白く輝く月のおかげでよく見えた。ハーブの香りを嗅ぎながら、二人は静かに探し始める。宝、それだけを求めて。
 風の音、遠くから聞こえるフクロウの鳴き声、葉の擦れる音、自身の息遣い。それらの中、二人は一切口を開かなかった。時間の感覚も、麻痺してくる。
「あ」
 どれくらいの時間が経ったのか。突然アザゼルが声を上げた。ヨーフィは手を止め、彼に駆け寄る。アザゼルが持っていたのは、手のひらサイズの箱だった。
「これ……」
 二人は互いを見つめ、頷きあった。ゆっくり箱が開かれる。途端、ひらりと何かが落ちた。ヨーフィがそれを拾う。それは紙だった。小さくて、けれど大きい字が書かれている。
 それを読んで、四つの瞳は大きく見開かれた
『ラファ兄、誕生日おめでとう! ヨーフィ』

 驚きに固まっている二人に足音が近づく。
「おい、人の家の前で何やってんだ」
 それはヨーフィとアザゼルがよーく知っている、ラファエルだった。



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