【浦島ラファさん】


2.カメと浦島さんは仲良くなりました

 ポツン、と浜辺に転がった緑の甲羅。じっとしていること数秒、ぽん!と頭と手足が現れました。半ば泣きながら、頬を膨らませてラファさんを捜します。
「ラファ兄のバカー!!」
 そうヨーフィが叫んだ途端、がしっと頭が掴まれました。
「バカで悪かったな」
「バ………バカバカバカ! 俺がどんな目にあったか……」
「助けてやったろ。甲羅が割れる前に」
「もっと早くしてよ!」
 ぐっと起こしてもらっても、ヨーフィは少しの間ラファさんに文句を言っていました。仕方ない、とラファさんは釣った魚を入れるカゴから袋を取り出します。
「お詫びの品だ。たんと食え」
「こ、これは…!」
 袋の中には、こんがりきつね色のクッキーがたくさん入っていました。甘い匂いが、ふんわり漂ってきます。
 しかし、ヨーフィはクッキーではなく、クッキーに練り込んであるオレンジ色の実に釘付けでした。それは、天界でも珍しい実だったのです。
「苦くって食べられなかった実を独自の方法で甘く変えたイワンの名が付けられたイワンの実。滅多に取れないけどものすごくおいしくて、店に出たら即完売するという伝説の!」
 ヨーフィの目がらんらんと輝いています。
「その実をふんだんに使用した極上のクッキーだ。特別にお前にやろう」
「え!? い、いいの?」
「もちろんだ。機嫌は直ったか?」
「ああああったり前じゃん! うわ、うわあ、もうラファ兄大好き!」
 喜びに舞っているヨーフィを横目に、ラファさんは思いました。イワンの実に似た別の実を半分以上入れて、かさ増ししていることは黙っていよう、と。
 貴重なものを贅沢に使うなんてことはしない、倹約家なラファさんです。
「さあ、カメよ。そろそろ時間じゃないか?」
 ヨーフィは自分がカメであることを思い出しました。
「そうだった! よし、竜宮城へレッツゴー!」
 ヨーフィとラファさんは、ざぶざぶと海へ入って行きました。



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