【浦島ラファさん】


4.お土産をくれるようです

 ごそごそ、ごそごそ。ラファさんとヨーフィの言い合いが終息に向かいつつあるのを確認して、アザゼルはそっと応接室を出て物置へやってきました。
「あれ、玉手箱ここらに置いておいたんだけどな……」
 乙姫さまが玉手箱をあげなければお話は進みません。アザゼルは棚の奥まで探しました。
「……ないなあ…あ、あったあった。こんなところに落ちて」
 黒い玉手箱は棚の横に落ちていました。アザゼルは拾って、悲しそうな顔をしました。フタにヒビが入っていたのです。
 なにかないかな。ぱぱっと辺りを見てから、アザゼルは応接室に戻りました。
「遅いぞ」
「すみません。はい、これ玉手箱です」
 玉手箱を手渡されて、ラファさんは無言になりました。ヨーフィも覗き込み、口を開きました。
「ガムテープ、だよな、これって」
「応急処置です」
 アザゼルは真面目に答えました。
「いや、まあ、いいんだが、グダグダだな」
「今更ですよ。あ、そうそう、えーと。これはお土産の玉手箱です。ですが、決してフタを開けないでくださいね」
 お決まりのセリフを言うと、アザゼルは自分の役目は終わったとばかりに胸をなでおろしました。しかし、ラファさんが待ったをかけます。
「開けてはいけないなら、返そう」
「ラファ兄! 台本通りにやらないと」
 ヨーフィが止めますが、ラファさんは玉手箱を突き返します。
「普通に考えろ。開けられない箱をもらっても困るだけだ」
「そこは、昔話としてスルーするところだよ!」
「今は私が浦島だ。いらんものはいらん」
「えー、僕も困りますよー」
 押し問答が繰り返されましたが、なかなか両者頑固です。いらない、こっちもいらない、いやいやこっちの方がいらない。これでは埒があきません。
「じゃんけん――」
 ヨーフィの声に、二人ともとっさに反応してしまいました。
「ぽん!」
 チョキとパーが出ました。ラファさんは明らかに嫌そうな顔をします。
「ラファ兄の負け! はい持って」
「……仕方ない」
 三人は玄関へ向かいました。そろそろお別れの時間です。
「お元気で」
 アザゼルはぎゅっとラファさんと握手しました。ラファさんは、なんの感慨も見せずにさっさと背を向けます。送って行くカメ、ヨーフィも後に続きました。
 さあ、そろそろクライマックスです。



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