【浦島ラファさん】
6.玉手箱の出番です
ラファさんは浜辺に座って、玉手箱を目の前にしました。あとは、これを開けるだけ。しかし、疑問が浮かびます。
「……煙、は出ないな」
白い煙がむわっと出て、浦島が変わってしまうというのが定番ですが、この玉手箱は割れています。ガムテープで補修してありますが煙が入っていたとしても、すでに箱から出ていることでしょう。
「考えても始まらない、か」
ラファさんは素早く玉手箱を開けました。もちろん、煙は出ません。その代わりに、ピカッと真っ白い光が放たれました。ラファさんはとっさに目を閉じます。
――ペタ、バフッ
頬に何かが貼り付いた感触と、髪に何かが降りかけられた感じに、ラファさんは目を閉じたまま背後を振り返り、そこに立っているであろう人物を掴みました。
だんだん目が回復してきます。じたばたする人物を、力いっぱい掴んで離しません。それでも逃げようとするので、ラファさんは勘で足払いをかけました。足払いと同時に、手を離します。
「いでっ!」
聞き覚えのある声に、目を開けます。そこには、尻もちをついたレヴァイアがいました。
「次はお前か!」
「怒るなよ~。ああっヒゲが取れる取れる!」
レヴァイアが手を伸ばしてきたので、ラファさんは自分の頬に何かついているのを思い出しました。バッと取ります。
「あー、取っちゃった」
「……ヒゲ」
ラファさんに貼られていたのは、サンタさんのようなもふもふの白いヒゲでした。そういえば、と頭を触ると白い粉がつきます。
「何をしたんだ、お前は」
「ラファの目が眩んでいる間に、ヒゲを付けて、白髪にしようと小麦粉を振りかけました!」
「なぜそうなる!」
腕を組んで、ラファさんはレヴァイアを睨みました。小さくなって、レヴァイアは答えます。
「玉手箱に煙入れて、ヒゲ入れて、開けて煙が出ている間にヒゲを付けてもらおうという計画でしたが、玉手箱が割れたので急遽変更しました、はい」
「……最後まで、ったく」
最大級のため息をついて、ラファさんはヒゲを付けました。そして、玉手箱の前に座ります。
「これでいいだろ」
「おお! いいね、似合ってるよ!」
「嬉しくもなんともないわ。早く終わらせろ」
「へーい」
レヴァイアは舞台裏に戻りました。そうして、舞台の袖から声を張り上げます。
「浦島ラファさんは、おじいさんになってしまいました! おしまい!」
はい、これでおしまいです。
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