【白雪姫ルシフェル】
6.お婆さん
カレーを食べて、ルシフェルは笑顔でした。
「おいしい! お腹空いてたのもあるけど、おいしいよ!」
「それは良かったわ。いっぱい食べてちょうだい」
デイズは笑顔のルシフェルを見て安心しました。他の三人もホッとしたことでしょう。ルシフェル餌付け作戦は成功したのです。作戦遂行のために協力し合った結果、ヨーフィの涙もいつの間にか止まっていました。一石二鳥です。
「この野菜スープも好き。バズー作だっけ」
「そう。味付けちょっと変えたんだけど、どう?」
「いいよ! 甘みがあって好き!」
バズーは誉められて満足そうです。その横で首を傾げたのはミカエルでした。
「この野菜、天界のじゃないのん? 僕すごく懐かしいんだけど」
「そうなのよ。森に置いてあったの、全部天界のものみたい」
デイズが答えます。カレーを頬張りながらヨーフィは言いました。
「魔界の食いもん、色からして毒々しいもんな。そりゃこの森に合わねーよ」
「色は…まぁねぇ。でも味は良いのよ」
のんびり食事は進みます。そこにノックの音が響きました。はーい、とデイズが返事をします。
「バズー、出て。あんたが一番ドアに近いから」
「あいよ」
「あ、バズーくん、ちょっと待ってん。次の展開だよきっと。ルーシーが出なきゃ。ルーシー」
「ふぁい」
もぐもぐと口を動かしながらルシフェルは席を立ちました。
「どちら様で――」
ドアを開けると、真っ黒いマントを身につけてカゴを持った人物が立っていました。フードを被っていますが顔は隠しきれていません。いえ、そもそも隠す気はないようです。金の髪がキラキラしてます。
「ヨーフィはいるか?」
「ぎゃー!!」
ルシフェルの悲鳴を聞いて小人たちは駆け寄りました。
「どうしたんだルーシー!」
「どうしたのよ! リンゴのお婆さんじゃなかったの!?」
「あ! 長身金髪ってまさか!」
「………」
小人三人は一斉に小人ヨーフィを見ました。目を丸くしたまま固まったヨーフィは、数秒間微動だにしませんでした。そして、瞳を潤ませます。
「ら、ラファ兄ー!」
「抱きつくな馬鹿者」
ラファさんは抱きついてきたヨーフィをいとも簡単に引っ剥がしました。けれども、ヨーフィはまったく気にしてません。
「ラファ兄! 本物だよね!? うわぁ嬉しいよ、ラファ兄!」
「うるさい」
「でもなんで? 今回、出番ないんじゃないの?」
ヨーフィが質問すると後ろから声がしました。
「そうだ、そうだ! なんだって大天使が出てくるのよ!」
小人三人を盾にして、その後ろからルシフェルが叫んでいました。若干泣きそうです。
「敵の大将と近距離でバッタリなんて怖すぎだわ! 納得いく理由があるんでしょうね!?」
ラファさんは言いました。
「もう終わったろうと思ってヨーフィとアザゼルを迎えにきたんだよ。そしたら、まだ終わってない上に魔王二人が寝てやがった」
ラファさんを惨状を思い出して眉を寄せました。食べて飲んで騒いで力尽きたのだろうと見当はつきました。
「酔っ払いを起こすのも待つのも嫌だから代わりに進めることにしたんだ。ヨーフィ、さっさと終わらせて帰るぞ。アザゼルはどこだ?」
ちゃんと進めるなんて真面目、というデイズの呟きにミカエルは深くうなずきました。
「それがラファさんの長所なのん」
「その分損してそうだけどな。ルーシー、そろそろ盾にすんのやめてくれない?」
六人ともなるとワイワイしてきました。ワイワイガヤガヤ。
そんな場を切り替えたのは、白雪姫ルシフェルでした。
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