【白雪姫ルシフェル】


7.リンゴ

「理由はわかった。納得もしたわ。そして、リンゴを食べれば目覚めのキスまでもうすぐだってことも理解した!」
 ルシフェルは小人三人の後ろから飛び出して、ラファさんの前に立ちました。そして両手を差し出します。
「リンゴくださいっ!」
「……これ、白雪姫だよな…?」
 悪魔軍が中心だとこうも崩壊するのか、とラファさんは少し引きました。だからと言って邪険にもできません。
「わかった。その前に一つ教えろ。アザゼルはどこだ? ヨーフィも知らんと言うし」
「ごめん、ラファ兄。白雪姫ラファさんだと思って浮かれて、アザゼルの話聞いてなくてごめん…」
 ヨーフィはラファさんの横で小さくなってました。頭をぐりぐりされても文句を言わずに反省してます。ルシフェルはヨーフィのしょんぼり具合をいささか心配しながら答えました。
「アタシは知らない。誰か知ってる?」
 デイズとバズーは首を振ります。ミカエルを手をあごに添えて唸りました。
「うーん、何役かは知らないけど確か……王子様カインくんと一緒だったから出番まだなんじゃないかしらん」
 ラファさんはため息をつきました。仕方ない、とカゴを探ります。
「ほらリンゴ……おい、白雪姫役どこいった」
 その場で全員キョロキョロ辺りを見回しました。バズーがいち早く地面に伏せて足をばたばたさせているルシフェルに気づきます。
「ルーシー何してんの!」
「こらっ衣装が汚れるじゃないのよ!」
 双子が慌ててルシフェルを起こします。
「だって王子様が! 王子様がカインなのよ! 最初から知ってたけど、きゃーやだもうドキドキしちゃうっ!」
「はいはい、カインさんに会うためにもリンゴ食べなさい」
 デイズがルシフェルを押しました。そのルシフェルの手に、ラファさんがリンゴを押し付けます。
「なんで天界のリンゴなのかわからんが、早く食え」
 つやつやおいしそうなリンゴを持って、ルシフェルは笑顔で言いました。
「あ、天界のものばっかなのは『天界で劇やるときは無償で協力します』って契約書にサインしたら神様がタダで輸出してくれたから、らしいですよ」
 ラファさんはそれを聞いて目をきつく閉じました。
「……我が主よ…なにしてんだ…」
「ラファ兄、大丈夫? 顔色が悪いよ」
 ふらふらとヨーフィに支えられながら、ラファさんは場を離れていきました。ルシフェルは気にしないで小人三人にリンゴを見せます。
「ルシフェルいきます! いただきます!」
 カプッとルシフェルはリンゴをかじりました。甘い果汁が口の中いっぱいに広がります。
「うわっおいしい! 天界リンゴ甘い!」
「だよね~天界でもリンゴって人気だったのよん」
 あまりのおいしさに驚くルシフェルに、ミカエルがうんうんうなずきます。そこにバズーが声をあげました。
「違う違う、ルーシー倒れて!」
「あ、そっか」
 ルシフェルはリンゴを持ったままくるくる回りました。
「あ~れ~毒が回る~」
 そのままパタリと倒れました。
「む、無念…」
 そして動かなくなりました。
「なんかルーシー、演技が古めかしいわね」
「最近、レヴァさんと時代劇にハマってるらしいぜ。とりあえずデイズ、ミカエル」
 バズーはルシフェルに駆け寄りました。二人も続きます。
「うわー白雪姫ぇ、なんてことだぁ。ミカエル、ガラスの棺どこ?」
「きゃー死なないでぇ。あっちに置いてあるよん」
「毒が仕込まれてたなんてぇ。男二人、棺持ってきて」
 戻ってきたヨーフィは劇らしくない劇に今更ながら「うわあ…」と思い、なかなか出て行く一歩が踏み出せないでいました。


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